他社の取り組みを、うちの規模に翻訳する

平均年齢34歳の会社で、6割が「介護中か、5年以内に介護の可能性あり」だった

社員が自分のデスクでアンケート用紙に記入している様子

平均年齢34〜35歳。介護はまだ先の話だと思われていた会社です。 社内アンケートを取ったら、6割が「介護中」か「5年以内に介護の可能性あり」でした[1]
ただ、この記事でお伝えしたいのは6割という数字ではありません。数えたこと自体が効いた、という話です。

白川プロがやったこと

株式会社白川プロは、テレビのニュースやドキュメンタリー番組の映像編集・音響効果を手がける東京都の会社です。 社員の平均年齢は34〜35歳[1]。介護とは、まだ距離のある職場に見えます。

きっかけは、取締役が雑誌の特集「隠れ介護1300万人の激震」を読んだことでした。 創業者が亡くなった後、労働環境の改革に着手していた時期でもあり、まずメンタルヘルスケアから始めています。 そのうえで役員会議に「仕事と介護の両立支援」を提案しました[1]

そして、社内アンケートを取りました。結果が、6割です。 「介護中」または「5年以内に介護の可能性がある」と答えた社員が、それだけいました[1]。 経営層が想定していたより、介護ははるかに身近にありました。

その後、セミナーを1回で終わらせず継続し、社内に介護相談員を置いています。 同社は東京都の「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業(仕事と介護の両立推進部門)」に選ばれました[1]

数字が出たから動いた、のではありません

アンケートで効いたのは、経営が実態を知ったことではないと思っています。 社員が、自分の手でチェックを入れたことの方です。

「5年以内に介護の可能性がある」に自分で印を付けた瞬間、 その人の中で介護が「他人事」から「いつか自分」に変わります。

介護の現場から見ると、ここが大きいのです。 デイサービスに来られたご家族には、「もっと早く来ていれば」と思うことが何度もありました。 早く来られなかった理由は、たいてい知らなかったことです。 介護保険の申請の仕方も、ケアマネジャーという人がいることも。

ただ、知らないのは当たり前だと思います。 自分が介護する側になると思っていない人は、調べません。 アンケートは、その「思っていない」を、静かに崩します。

アンケートは「調査」ではなく「きっかけ」です

集計結果を経営会議に出すことが目的なら、回収率を上げる工夫の話になります。 ただ、ここで起きていたのはそれだけではありません。 設問を読んだ社員が、自分の親の年齢を思い浮かべた——数える側の意図とは別に、 答える側にも変化が起きます。取ること自体に意味がある、というのはそういうことです。

で、300人の会社はどうするのか

白川プロが聞いたのは、この2つです。

設問この設問が拾うもの
いま、介護をしていますか すでに始まっている人。ただしこの人たちは、多くの場合まだ会社に言っていません
5年以内に、介護の可能性がありますか まだ始まっていない人。本来いちばん早く動ける層で、いちばん取りこぼされます

「いま介護をしていますか」だけを聞いていたら、6割という数字は出ていません。 平均年齢34歳の会社です。手を挙げる人は、ごくわずかだったはずです。 そして「うちはまだ介護は関係ない」という結論が出て、話はそこで終わっていました。

2つ目の設問には、もう1つの働きがあります。 まだ始まっていない人に、考えてもらえることです。 すでに介護をしている人は、聞かれなくても分かっています。 知らないまま突然始まるのは、いつも「まだ関係ない」と思っていた人の方です。

数えたあとの受け皿を、先に決めておいてください

白川プロは、アンケートの後にセミナーを継続し、社内に介護相談員を置いています[1]手を挙げてもらう前に、挙がった手をどうするかが決まっている状態でした。

聞くだけ聞いて何も返ってこないと、次に聞いたときには答えてもらえません。 受け皿といっても、大がかりなものは要りません。 担当者を1人決めて名前を出す、最初に何を聞くかを決めておく——それだけでも形になります。

今日持ち帰れること

  • 平均年齢34歳の会社でも6割。「うちはまだ若いから」は、数えていないだけかもしれません
  • 効いたのは数字そのものではなく、社員が自分の手でチェックを入れたこと
  • 聞くのは2つでいい。ただし「5年以内に可能性がありますか」を必ず入れる。これが無いと、まだ始まっていない人が拾えません
  • 自分が介護する側になると思っていない人は、調べません。だから、思ってもらうところから
  • 数える前に、受け皿を決めておく。担当者の名前を出すだけでも足ります

その社員の場合、どうなるのか

ここまでは会社全体の話です。明日困るのは「目の前のこの社員に何を渡すか」のはず。 聞いた話を入れると、その社員の見通しが1枚にまとまります。印刷して、本人に手渡してください。

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出典

  1. 事例紹介②:株式会社白川プロ|人事ができる"仕事と介護の両立"支援の実践ポイント#8|HR NOTE(2024-10-22) ※「6割」の母数・算出方法は元記事に詳細の記載がなく未確認です。離職率・採用への影響についても、具体的な数値の記載はありません。
  2. 株式会社白川プロ|導入事例|ベネッセのワークアンドケア同|お客様の声
制度の内容は記事作成時点の公開情報に基づきます。改正されることがあり、個別のケースには例外もあります。 実際の運用にあたっては、必ず厚生労働省・お近くの労働局・顧問社会保険労務士にご確認ください。 掲載企業の取り組みは各社の公表資料および報道に基づき、出典を明記しています。記事中の解釈は筆者個人の見解であり、掲載各社の見解ではありません。
足立 泰次郎
足立 泰次郎 介護福祉士 / 合同会社TJプランナーズ
介護の現場に20年。デイサービスの管理者として、ケアマネジャーがつき、介護サービスが回り始めたご家族と日々向き合ってきました。 逆に言えば、まだ誰にも言えず抱えている段階の人は、この現場には現れません。だからこそ「見えていない人がいる」と実感しています。 このノートでは、他社の取り組みを「専任も予算もない300人の会社なら、どう縮められるか」に翻訳しています。 介護施設や紹介会社からの紹介報酬は、一切受け取っていません。