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セミナーの講師を、外部の専門家ではなく「介護を経験した自社の社員」にした

会議室で社員が同僚たちの前で話している様子

福岡のWebコンサルティング会社が、介護セミナーの講師を、外部の専門家ではなく自社の社員にしました。 実際に介護を経験した社員です[1][4]
お伝えしたいのは、外部の専門家が要らないということではありません。順番の話です。

ペンシルがやったこと

株式会社ペンシルは、福岡市のWebコンサルティング会社です。従業員は約140名(※)。 2015年に「ダイバーシティ経営方針」を定め、育児や介護で時間に制約のある人が働けるパートタイム制度を先に整えています[4][5]。 その後、社員の年齢層が上がるにつれて、介護が次の課題として見えてきました。

やったことは4つです。

  • 全社アンケートを毎年実施(2019年〜)[4]
  • 介護を経験した社員による社内セミナー[1][4]
  • 介護経験者を集めた座談会を開き、その内容を社外にも公開[3]
  • アンケートと聞き取りをもとに、両立ハンドブックを作って全社員に配布[4]

加えて、在宅勤務・時短・繰り上げ出勤に「家ペン」「短ペン」「早ペン」という社内の呼び名をつけています[4]。 2024年3月、経済産業省の「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」の先進企業参考資料集に、全国14社の1社として掲載されました[1][2]

なぜ、外部の専門家ではなかったのか

ペンシルが挙げている課題は、制度が足りないことではありません。 「介護に直面した社員が孤立してしまう。誰かが経験していることを、他の人が知らない」——ここだと説明されています[4]

制度の説明なら、外部の専門家のほうが正確です。 ただ「誰かが経験していることを、他の人が知らない」は、外部の人間が話しても解けません。 同じ職場に経験した人がいる、と分かることでしか解けないからです。

セミナーで話されたのは、ビジネスケアラーの実態、使える制度とサービス、介護中の働き方の工夫でした[4]

で、300人の会社はどうするのか

社内に1人でも経験者がいれば成立します。費用はかかりません。 ただ、頼み方に気をつけたいところがあります。

頼むとき気をつけること
誰に頼むか 介護が一段落した人に。いま進行中の人には頼まない。話すこと自体が負担になります
何を話してもらうか 「何に困って、何をしたか」まで。親の病名や家庭の事情は、本人が出したいところだけ
準備 資料づくりと進行は会社側で持つ。本人には、話してもらうだけにする
断れるように 断ってよい前提で頼む。断りにくい空気だと、次から誰も経験を口にしなくなります

ペンシルは座談会を社外にも公開していますが[3]、これは最初からできることではないはずです。 社内で話せる空気ができた後の段階、と考えたほうが無難です。

社内に経験者がいるか分からない場合

名乗り出てもらう前に、アンケートで数だけ数える方法があります(→平均年齢34歳の会社で、6割が該当した)。 誰かが答えたという事実が分かるだけでも、頼む相手の見当がつきます。

ただし、経験者の話には限界があります

ここは、介護の側から正直に書きます。

介護のケアプランは、一人ひとり違います。同じ「要介護2」でも、住まい、家族構成、本人の性格で、組み方が変わります。 千差万別です。

だから、介護を経験した社員が話せるのは、自分の親の1ケースです。それはとても貴重です。 ただ、聞いた人が同じようにできるとは限りません。 「うちもデイサービスに行かせればいいんですね」と受け取られると、かえって遠回りになることがあります。

一つのケースを知っていても、他は知らないかもしれない。
ただ、ある程度パターン化はできる。

パターンを渡すのが、外部の役割です。だから、順番はこうなります。

  1. 社内の経験者が話す → 聞いた人が「自分にも起こる」と思う
  2. その後で、外部が「起きたときの型」を渡す

逆にすると、まだ自分ごとになっていない人に制度の説明をすることになります。 その日は席が埋まっても、次の日には残りません。費用だけがかかります。

今日持ち帰れること

  • 講師は社内の介護経験者から。1人いれば成立し、費用はかかりません
  • 話してもらうのは「何に困って、何をしたか」まで。家庭の事情は本人が出したいところだけ
  • 進行と資料は会社が持つ。断れる前提で頼む
  • ケアプランは千差万別。経験者が話せるのは自分の1ケース。「同じようにすればいい」にはなりません
  • 外部を呼ぶのは、社内で話が出た後。順番が逆だと、費用だけかかります

その社員の場合、どうなるのか

ここまでは会社全体の話です。明日困るのは「目の前のこの社員に何を渡すか」のはず。 聞いた話を入れると、その社員の見通しが1枚にまとまります。印刷して、本人に手渡してください。

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制度の内容は記事作成時点の公開情報に基づきます。改正されることがあり、個別のケースには例外もあります。 実際の運用にあたっては、必ず厚生労働省・お近くの労働局・顧問社会保険労務士にご確認ください。 掲載企業の取り組みは各社の公表資料および報道に基づき、出典を明記しています。記事中の解釈は筆者個人の見解であり、掲載各社の見解ではありません。
足立 泰次郎
足立 泰次郎 介護福祉士 / 合同会社TJプランナーズ
介護の現場に20年。デイサービスの管理者として、ケアマネジャーがつき、介護サービスが回り始めたご家族と日々向き合ってきました。 逆に言えば、まだ誰にも言えず抱えている段階の人は、この現場には現れません。だからこそ「見えていない人がいる」と実感しています。 このノートでは、他社の取り組みを「専任も予算もない300人の会社なら、どう縮められるか」に翻訳しています。 介護施設や紹介会社からの紹介報酬は、一切受け取っていません。